おせちに合わせるお酒

Japanese SAKE
みなさんはおせちに合わせる「お酒」、どうしていますか?味が濃いものが多いので、なんとなくビールばっかり…という方も多いのではないでしょうか。

 

色々な料理が詰まっているおせちは、実は日本酒ワインなどのお酒の肴としてもぴったりなんです。

 

今回はおせちとお酒の合わせ方をなだ万レストラン「赤坂ジパング」の横尾正樹さんと、佐々木克之さんにお話を伺ってきました。

 

お二人ともなんとシニアソムリエ。ソムリエ経験が3年以上、かつ飲食業の経験が10年以上ないと資格試験を受けることすらできない、いわば「ソムリエの中のソムリエ」。そしてプライベートでは日本酒もよく召し上がるのだとか。

 

どんなお話をお聞きできるのか、取材前から期待してしまいます!

 

おせちといったらやっぱり日本酒のイメージが強いです。ざっくりとした日本酒の味の分類を教えてください。

横尾さん
「味の表現はどうしても主観的になってしまうので、なかなか言葉で共有するのが難しいんですよね。でも、お客様からは『フルーティなものを』というリクエストを頂くことが多いです。」

 

佐々木さん
フルーティの反対は、おおまかにいうとドライなもの。昔ながらの淡麗辛口ですね。」

 

横尾さん
「香りは立たないけど、味がすごくしっかりしている、日本酒らしい日本酒が、フルーティの反対なのかもしれません。」

 

ずばり「おせちに合うお酒」というのはなんなんでしょうか?

横尾さん
「おせちって極端というか、味がはっきりしているじゃないですか。甘いものは甘く、しょっぱいものはしょっぱい。なので、お酒を1種類だけを選ぶというのは難しいかもしれないです。」

 

佐々木さん
2種類選べるのなら、飲むたびに口の中をリセットできるようなキレの良い辛口と、逆におせちの味全体を包み込んで受け入れるような、芳醇な日本酒が良いと思います。」

 

確かに、田作りのようなしょっぱいものと、くりきんとんのような甘いものまで、おせちには色々入っていますね。ちなみに黒豆と日本酒って合わせること、できるんでしょうか…?

横尾さん
「黒豆ぐらいまで突き抜けて甘いと、日本酒はちょっと厳しいかもしれないです。だて巻きぐらいなら、本醸造を30度ぐらいのぬる燗にして合わせるのが良いかもしれません。」

 

黒豆ぐらいになると、チョコレート感覚で蒸留酒を合わせる方がまだイメージできますね。

横尾さん
「おもしろいですね!」

 

佐々木さん
「確かにそれ、合いそうです。」

 

では逆にしょっぱいものだとどうでしょう?田作りとか、昆布巻きとか。

佐々木さん
「これは悩ましかったです。」

 

横尾さん
「これらのお料理って、色味が暗いじゃないですか。色味が暗いものには辛口の純米が合うことが多いですね。大吟醸は多分合いません。大吟醸は、イメージとしては明るい色味の食事に合うことが多いです。」

 

それではお肉はどうでしょう?最近のおせちだと、合鴨とかローストビーフとか入っていますよね。

横尾さん
「僕はこれが悩ましかった。」

 

佐々木さん
「まず、鴨とローストビーフだと、同じお肉だけど全然違うんですよ。違うというのは、香りとか脂の量ですね。だったら優しい味わいのお酒で、ローストビーフだとしっかりしたものがオススメです。

 

それでもざっくりお肉合わせのお酒を提案するとしたら、山廃でしょうか。独特な風味が、焼き物全般に合うと思います。」

 

なるほど、一口にお肉といっても、いろいろな合わせ方もあるんですね。おせちには欠かせない、かずのこなどの魚卵はどうでしょう?

佐々木さん
「まず言えるのは、ワインではないです(笑)」

 

魚卵とワインの組み合わせは、ひどいことになってしまうらしいですね。

佐々木さん
魚介の生臭みを強調してしまうのは、ワインに含まれている鉄分なんです。フランスとかヨーロッパって土壌に鉄分が多いので、ワインにも鉄分が多くなってくる。

 

日本のワインだと鉄分が少ないので、魚卵とも合わせやすいという話は聞いたことがあります。日本は水が柔らかいからですね。どうしてもワインを合わせたかったら甲州ワインとか日本のワインがオススメです。」

 

横尾さん
「日本のワインって安くて質が高くないイメージを持たれがちなんですが、ここの数年で製造設備の進化がすごくって、どんどん品質も上がっていってるんです。もともと気候ではヨーロッパにはかなわないので、それをカバーするための技術がどんどん向上している印象があります。」

 

それでは最後に、口直しの酢の物に合うお酒、これはどうでしょうか。

佐々木さん
「同じテンションで合わせるとダメですね。酸味があるお酒は合わないと思います。」

 

横尾さん
「酢の物って完全にお酢の味ですからね……。日本料理のお酢は強いです。イタリアンとかだったら、カルパッチョにビネガーソースがかかっていても、白ワインを合わせられるんですけど。」

 

佐々木さん
「熱燗は合わないだろうなあ。包み込むようなお酒が良いかもしれません。雰囲気としてはスパークリング日本酒だけど、甘すぎると合わないかも。」

 
「色々なお酒を飲みながら、自分で合うものを探していくのも楽しそうですよね。私だったら、田作りシェリー酒とか試してみたいです。」

 

田作りにシェリー酒とは、和食とお酒のプロである方ならではの発言ですね。今日はありがとうございました。

インタビューの中で、「日本酒と料理を合わせる文化は最近のもの」ということを教えて頂きました。ワインが流行し、いわゆる「マリアージュ」という考え方から派生してきたものなんだとか。

 

そんなうんちくや、今回お聞きすることのできた合わせ方の知識があれば、今度のお正月はいつもより楽しくお酒を飲むことができそうです。

 

お酒を1杯飲んだら水を1杯飲む「和らぎ水」も忘れずに。二日酔いでせっかくのお正月休みを台無しにしないようにだけ気を付けたいものですね。

 

Text: 中野 晃子(ライター。飲食関連の記事を得意とする。趣味は飲み歩きと料理と散歩。)